人間の注意の向けかたを探る【人間探究領域 有賀敦紀先生】

こんにちは!夏真っ盛りで暑さの厳しい日が続いておりますね。
大学も先日から夏休みに入り、学生は帰省したり友達と遊んだり夏を満喫していると思われます☀️

さて。今回からは昨年春に取材を行った飛翔94号の先生インタビューの記事を公開します!

94号第一弾は
総合科学科 人間探究領域 人間行動科学科目群
有賀敦紀先生
です!

有賀先生の専門は認知心理学。さらにそれを応用した消費者行動についての研究も行っておられます。

人がどのように世界を認識しているのかを研究する認知心理学の世界。
その奥深さに迫ることができました!

それではどうぞ!

言語と商品配列の関係?

ーまず、先生のなされている研究について教えてください。

   専門は認知心理学で、人間が外の世界をどう見ているのかとか、どうやって認識しているのかなどの研究をしています。具体的に言えば、例えば車の運転などをしているときにはずっと外の世界に注意を向ける必要があるわけです。ただ、人間の集中力の持続時間は限界があって、20分くらいでパフォーマンスは落ちてきます。それで、集中力というのはどうやって維持されるのかなぜ低下してしまうのか、何に注意がとられてしまうのかとか、いうのも一つの研究テーマとしてやっています。

 もう一つは、消費者行動に関してで、人間がものを買うとき、何に基づいてものを買うのか、それをさっきの認知心理学とかを応用して調べています。人間は目立つものに注意が行くので、何に注意をとられるのかって言うのを広告やCMとかに生かせないか、と言う研究をしています。

 ー認知心理学に興味を持ったり、その研究を始めたりしたきっかけはなんでしょうか?

 きっかけは、あえてあげるならば学生の時に受けた認知心理学の授業が面白かったから。大学でいろんな種類の心理学の授業を受けた中で、認知心理学を受けたら、「こんな簡単に人の心が測れるのか」って。それで認知心理学の授業の先生のところに行って色々な本を借りたりして、結果的にその先生のゼミに所属して卒業研究とかもやった、というのがきっかけですね。

ー先生が今まで様々な研究をしてきた中で一番難しかった、苦労をした研究は?

 うーん、今のかもしれない。今は消費者行動で、商品の配列効果というのをやっている。商品を垂直に並べるのと水平に並べるの、どっちがよく売れるのかってテーマがあって、最初に言ったアメリカの人は人間の目は横についていて視野が横に広いので、横の方が絶対売れやすいということを言っている。でも人間の目って動くし、頭も動くので横が特別有利なわけではないと。そういうことで研究をやって、実際日本人を対象に実験したら横も縦も同じくらい売れたんだ。

で、何でアメリカ人は同じ状況なのに横だけ有利かって考えると、英語って横書きなんだよ。で、日本人には縦読みの文化と横読みの文化両方あるから、日本人は横の文章読ませた後に買い物をさせると横の配列の中から選ぶし、縦の文章を読ませた後だと縦(の配列)から買う、みたいなのを見つけて、それを今報告してるんだけど、なかなか理解してもらえなくて…笑。 それに今苦労してます。

ーじゃあ言語によって変わるってことですか?

 たぶん。そうすると多分置く順番とかも大切になってきて、多くの文化って横読みの場合は左から右に読むけど、アラビア圏って右から左に読むでしょ?そういう文化の違いってあるんじゃないかって思ってて、そういう研究を今している最中です。

※画像はイメージです

行き着いた答えは「人の心がいかに読めないのか」

ー実験して生活とかに生かすときに「あ、この人こういうこと考えて、こういうことしてるんだろうなぁ。」って思ったりすることはありますか。

 いや、ないね。みんなこれから心理学を学ぶと思うんだけど、心理学を学んでわかることっていうのは人間の心がいかに読めないのかっていうことで。僕が行き着いた答えはそこです。

例えば友達と接しててさ、この人外交的だな、内向的だなって話してるとわかるじゃん。性格検査であってもその程度しかわからない。『なんとなくこの子こういう子だな。』っていうのがわかることを数値化して調べることができるけど、自分はそういうところにあんまり興味があんまり持てなかった。それよりは認知メカニズムとか、社会性とかそういうものの方が好きだったので、そっちの方面に行っただけ。

自分の「興味」を大切に!!

ー研究の魅力を教えてください。

 わからないことがわかったときっていうのは嬉しい。認知心理学って消費者行動までいけば人の役に立つんだけど、そうじゃなければ別に人の役には立たないんだよ。こんなことやっても世の中の役に立つかっていったら役に立たないんだけど、でも自分は役に立たなくても何かがわかったら嬉しい。周りの人に『それやってなんの役に立つの?』って言われてもそんなのほっといてくれと。だから自分が楽しいことを追求して行くっていう楽しさがあるかもしれない。

ー今後の目標はありますか。

今何かわかってなくて、心理学を使えばこういうのがわかるんだよっていうのをできればいいかな。で、マーケティングの世界とかっていうのは心理学を知らない人たちがやっているので、心理学者から見るとあんまり上手に見えない。なので、その人たちを批判するわけではなくて何かサポートできればいいかなと。

ー総科生に向けてメッセージをお願いします

 興味がないと思った授業でもとってみることだね。自分の興味が決まってる人のありがちなのが興味がない授業は取らないことなんだけど、それは良くない。高校までに得た知識とかってすごい限られた世界の話であって、例えば認知心理学っていう授業だと授業で知れる世界は心理学の中でも10%ぐらいの割合なんだよ。もう一つ、大学って勉強とか研究とかする場所なので、何か興味のあるものを見つけたらどんどんそれを議論したほうがいい。先生のところに行って本を紹介してもらうとか。図書館に行って勉強するとか。決してこれをやったら就職に役に立つとかっていうのは僕はあんまり考えて欲しくない。人からなんの役に立つんだよって言われようが、自分はそれで面白いんだっていう信念を持ってやっていただけたらなーと思います。

まとめ

一見関係なさそうな言語と商品配列が関係あるかもしれない?というのがとても興味深かったです。認知心理学の研究テーマは日常のいろんなところに転がっているんですね。

また、「自分の楽しいと思ったことを追求していく」という言葉がとても心に響きました。周りの言葉や批判に流されず、自分の興味や好奇心を大切にして、日々の生活を送っていけたらなと思います。

それでは今回の記事はここまでです!意見・感想などはお問い合わせフォームからお送りください!

次回の更新もお楽しみに!

(文責:If.)