ストレスや不安が本性を表す?【人間探求領域 岩永誠先生】

こんにちは!
本日は飛翔94号からの記事です・

今回紹介するのは 総合科学科 人間探究領域 人間行動科学科目群 岩永誠先生です。

岩永先生の専門は臨床心理学。ストレスなどをテーマに扱っています。また、それに加えて音楽心理学などの研究もなさっているそうです。

『ストレス社会』と言われる現代、心の病に苦しむ人も少なくありません。それらの改善・予防のためにどのような研究をされているのでしょうか?

それではどうぞ!

ストレスや不安が『素の人間』を引き出す

ー研究内容について教えていただけますか?

 臨床心理学という分野で、人の心の問題を扱っています。現代社会が抱える、メンタルヘルスの問題が引き起こされる原因、そして改善策を探るために、恐怖、不安、鬱、ストレスをテーマに研究しています。鬱が引き起こされる大きな原因は、ストレスです。人が抱えるストレスは、職場や家庭など個人の生活環境の違いによって異なります。また、感じるストレスの種類や、ストレスの感じやすさ(ストレスへの強さ)の程度も、各個人によって様々です。それらを個別に調査していく中で、どういう人がどういう状況に置かれたときにストレスを強く感じるのかを整理し、そのストレスが継続することで人が鬱に至る過程を明らかにしようとしています。

加えて、音楽心理学の研究もしています。音楽を聴くことによって人の感情がどう変わるか、といったことがテーマです。音楽によってつらい、悲しいといったネガティブな感情をうまくコントロールすることが、鬱への対処にならないかと考えて研究しています。みなさん、悲しい気分になった時は、どんな音楽を聴きますか?明るい音楽を聞いて、気持ちを取り戻そうと考える人もいるかもしれませんが、実は悲しい気分になった時は悲しい音楽を聞く、という研究結果が世界的には多い傾向にあります。少し意外に感じますよね。なぜかというのはまだ十分には解明されていないのですが、悲しい気分の時に悲しい気持ちになるような音楽を聞くことが実は悲しみを解放するという、同質性の原理によるのではないかとも言われています。

そして、リスクについても研究しています。人が何を基準に危険性を評価するかを調査して、災害時の適切な避難などに生かすのが目的です。

※画像はイメージです
Q鬱やストレスの研究に興味を持った理由はなんですか。

人間の「本当の状態」を見る際、不安やストレスというものはとてもいい素材だと思ったからです。人間というのは、いわゆる「普通の状態」だと、こんなことしたら人に笑われるかも、こんなことしたらバカにされてしまうかも・・・と、危機感から自分の行動を一生懸命コントロールしていますよね。だけど、焦ったり予想外の行動を取ったりしてしまうと、自分をうまくコントロールできなくなって、素がポッと出ちゃうことがありますよね。この時がある意味人間の「本当の状態」なのです。不安やストレスは、人間にとってものすごく負荷を感じるものなので、自分自身を何とか取り繕おうとする余裕がなくなります。だから、不安やストレスを感じた時に人間の本質や問題が出てしまうのです。

  しかし、不安やストレスを感じた際の人間の行動をただ単に調べていくだけではなく、それらをうつ症状の予防やストレスへの対処方法に生かすことで社会に還元しています。

Q研究をこれからもしていくと思うのですが、今後の目標について教えてください。

今はうつ病の「予防」の研究に力を入れています。ストレスがあるのは生きていれば当たり前。問題はそれにどのように対処して、うつ病になるのを避けるかということです。先に述べた通り、ストレスの種類や感じやすさの程度には個人差があるので、それに対応した予防策が必要です。例えば日常生活を変えてみる、朝起きる時間を変えるとか・・・。

人が極限状態に追い込まれ、考えうる行動の選択肢がどんどん絞られ、そのことによって問題を引き起こしていく、というメカニズム本体こそに一番興味があります。

たくさんチャレンジし、失敗から教訓を得る。

Q総科のいいところを教えてください。

研究において、課題をブレイクスルーできる可能性が高いということです。ブレイクスルーというのは、私の経験上、必ず他の領域、つまり自分がやっていることとは違う領域と何らかの形で接点を持った時に生まれるんですよね。色々な領域に触れながら、あ、この方法は自分の研究に使えるな、と感じたものを導入する。そうやって生み出された方法は新しいものですよね。専門領域を持ちながらも多くの領域に触れられる環境が整っている総科ならではの利点です。

 だから、ぜひ色んな領域の人たちと話をしてください。あなたたちは自身が色んな領域のことを学ぶようになるわけですよ。これはすごく面白いことでしょう?だって友達と話をするわけだからそんなに肩に力を入れず、ざっくばらんに他の領域の人と話せるじゃないですか。その友達、三年生、四年生になってくるとその友達の指導教員に聞いたりとか簡単にできるでしょ?
だって僕、学部の四年生の頃っていうのは、心理やろうか情報やろうかってよく分からなかった時代で。何してたかっていうと、心理系の先生の所と情報系の先生の所とほぼ半分ずつ行ってたんですよ。で、そこで色んなことが聞けることのおもしろさ。総科の先生っていうのは、学生たちが来ることをすごく喜ぶと思います。ぜひ、色んなところに行って色んなディスカッションをした方がいいと思います。

Q最後に総科生へ一言。  

要するに何事にもチャレンジすればいいと思います。さすがに社会に出たら失敗は許されないですが、学生までは失敗は許される。学生までは失敗しても先生や親がフォローしてくれるので、失敗することを恐れてはいけません。むしろ失敗して教訓を得ることが大切です。こういうことをやったら失敗するぞ、ここに気を付けておかないと失敗するぞ、っていう項目を知っておくと、社会人になってから何かをしようとする時にそのことを適用できるわけですよ。抑えるべきポイントを幾つか知っておくだけで、失敗しにくくなる。だから、今のうちに失敗するっていうのはいいことですよ。ただ、社会人になって独り立ちしたら、誰もフォローしてくれなということは頭の片隅に入れておいてくださいね。だからこそ、今、チャレンジするのです。

まとめ

 不安やストレスを感じたときに着目し、人間の本当の状態を探る、というのがとても興味深かったです。確かに不安や焦りを感じたり追い込まれたりすると冷静な判断ができなくなったりしますね…。

ストレスとどのように向き合っていくか、改めてきちんと考えていきたいと思いました。

それでは今回の記事はここまでです!

次回の更新もお楽しみに!

文責:If.