モチベーションは未知の課題に挑戦する面白さ[自然探究領域 横山正先生]

こんにちは!

今回は、飛翔97号の記事からです。

今回紹介するのは、総合科学科 自然探究領域 自然環境科学授業科目群の、横山正先生です。

横山先生の専門は、岩石の風化に関する基礎研究です。

それではどうぞ!

手作り装置で世界と勝負

ー研究内容について教えてください。

 環境中には水が大量に存在し、さまざまな場所で岩石と水との相互作用が生じています。例えば、一般に岩石は長石や雲母などいくつかの鉱物が集合してできていますが、雨が降るなどして岩石と水が接触すると、鉱物どうしのすきま(間隙といいます)に水がしみこんでいき、鉱物が水に溶解したり別の鉱物に変化したりして、徐々に岩石が風化していきます。このような岩石の風化を深く理解することを主な目的として、関連するいろいろな基礎研究を進めています。具体的には、水や溶存元素がどのように間隙中を移動するのか、鉱物はどのように水に溶けるのか、結果としてどのくらいの速さで岩石が風化していくのか、などを調べています。

ー岩石や鉱物をどのように研究されているのですか。

 岩石を調べるには、まず岩石中の鉱物の種類や量、サイズなどを調べる必要があります。そのために、偏光顕微鏡や電子顕微鏡などを用いて岩石を観察・分析します。また、岩石内部に水を流して、どのくらい水が流れやすいかを調べます。さらに、岩石から流れ出た水の中の元素の種類や量を測定することで、岩石と水との反応が進む速さを調べます。また、水は間隙を流れるので、間隙の量やサイズも知る必要があります。そのために、間隙中の水をガス圧で押し出して、その量を調べるという実験も行っています。

 私の研究の特徴の一つとして、工作好きということもあり、よく手作りの装置で実験をします。岩石の中に水を流す装置や、間隙中の水を押し出す装置も、買ってきたアクリル板やパーツを加工したりつないだりして自作しています。手作りの装置は、仕組みが全て把握できるのでブラックボックスがない上に、何か工夫を思いついたときにすぐ実現できるので、研究の自由度やオリジナリティが高くなるという良さがあります。一方、一から自分で組み立てなければならず、非常に手間がかかる上に、市販の装置と同じ実験を行うのであれば、自作のものでは実験の精度が劣ることも多く、全体として研究の効率やクオリティーを上げるのは容易ではありません。もちろん、目的によってさまざまな市販の装置も使います。また、手作りは単なる私の好みで、それが優れているとか他の人に勧めたいとかいうことは全くありません。ただ、自作の装置で出した結果を他の専門家からも認めてもらえたときは、自分の力が通用したという痛快さはあります。今後も私自身はこのスタイルで世界と勝負していきたいと思います。

ー岩石や鉱物に関わる研究をしようとした経緯について教えていただけますか。

 私は小さい頃から自然の中で遊ぶことが好きでした。近くに小さな山があって、そこで木に登ったり、藪の中を探検したり。結構危なっかしい遊びも多いのですが、両親は比較的自由に遊ばせてくれました。当時でも日常的に山で遊ぶような子は珍しかったですが、私は野山に行くとわくわくして楽しく、小学校の頃はよく山に行っていました。そんなわけで、小さい頃から地学にはなじみがありました。あと、中学、高校と勉強していく過程で、化学にも興味を持ちました。大学の学部時代に専門を選ぶ際に、地学の道に進むか化学の道に進むか迷いましたが、授業で興味を持った先生にお話を聞くなどして、地学をベースに化学も関連したことを研究することを選びました。それで、岩石と水の化学反応である岩石の風化の研究を始めて、今だに続けているというわけです。

広い視野を得られるのが総科の良さ

ー総合科学部の良いところについて教えていただけますか。

 私は総合科学部に来て5年目で、それほど長い歴史をみてきたわけではありません。かつて所属していた他大学の理学部との比較になりますが、総合科学部全体として文系・理系にとらわれず分野融合を重視する点は、広い視野をもつ人材を育てるという点では優れていると思います。例えば、私は地学が専門なので野外実習の指導などを行うのですが、総合科学部に来るまでは地学の先生達だけで指導していたので、野外で観察するものは地層や岩石が中心でした。ところが、総合科学部では、一つの野外実習において、岩石、森林、土壌生態、気候など様々な分野の先生が一緒になって指導をするので、山に登り岩石や地層を見ながら、そばに生えている樹木やキノコの特徴がわかったり、大気の放射量がどのように高度変化するかを考えたり、などということがあります。このような広い知識が得られるのは総合科学部ならではで、教員自身も大変勉強になります。多くの分野にまたがる視点で物事を考えられるようになる、というのが総合科学部の強みでしょう。