通信技術で人と人を繋ぐ[自然探究領域 児玉明先生]
こんにちは!
今回は、飛翔97号の記事からです。
今回紹介するのは、総合科学科 自然探究領域 数理情報授業科目群 児玉明先生です。
児玉先生は、主に情報通信、画像通信、画像工学について研究しておられます。
それではさっそく、研究内容からみていきましょう!
夢は未来で使えるサービスを作ること
ー研究内容について教えていただけますか。
私の研究分野は情報通信、画像通信、画像工学という分野です。私は、メディアコミュニケーションサービスに関わる研究をしています。
学生時代からMPEGに関する研究を続けてきました。MPEGとは動画圧縮方式の名称として知られており、BSデジタル、地上デジタル、DVD、ブルーレイ等で使われている動画像符号化の国際標準方式のことで、皆様も様々な映像視聴時に使っています。この研究を学部時代から修士,博士,助手、その後と続けて行っており、特に階層符号化方式に関連して博士号を取得しました。標準化策定のために国内外のMPEG関連会合(ISO/IEC, ITU-T等)にも参加し、標準化活動を行ってきました。標準化活動とは、総務省や経済産業省等の国の行政機関や国内の標準化委員会等と協調して、各研究機関が独自に提案する符号化方式を国際標準とするための国際競争の場であり、現在でも最新技術は検討されています。それらの経験を踏まえて、画像符号化(所謂、画像圧縮)や画像処理、画像通信というのが私の専門分野です。また、画像通信・画像処理における基礎的な入出力技術から、画像アプリケーションやサービスまで、広範囲に亘って研究しています。
ー画像圧縮とか画像分析っていうのは、具体的にどのようなことをされているんですか。
動画の情報量は音声情報の数千倍以上になると言われています。例えば、アナログ時代の画像サイズでも情報圧縮しなければ秒あたりで約150メガビット以上の情報量が発生します。したがって、更に高解像度化された現在の動画では、たとえ高速ネットワークであっても非圧縮データを使用すると、わずか数人の利用でパンクしてしまいます。しかし、圧縮技術を利用すれば、同一ネットワーク上で同時にその数十倍、数百倍の人が使えるようになります。近年高速通信網が普及する中でも、動画(映像)圧縮技術は活用されており、情報通信の基幹技術の一つとなっています。また、圧縮時の画像フォーマットは構造化データ(一枚の画像やそれをメッシュ状に分割したブロック等を単位に構造化されたデータ)であり、その構造や動き情報等を直接活用することで、高速な画像処理アプリケーションを作製できます。例えば、動き情報は動画検索、動画認証、動き解析等の研究にも利用されています。日常生活で画像処理技術が活用され、身近に画像処理・通信装置(カメラも含む)が普及しているのは嬉しいのですが、その一方で、影の部分を忘れてはいけないと思います。言い換えると、身近なPCカメラや監視カメラ等で、盗撮されたり、画像解析されたり、他人に、自分が町を歩いている様子を勝手にカメラに撮られたり、写真がアップロードされたりという危険性もあります。これら危険性を防御する技術開発や法・運用ルールの整備等も、今後重要です。画像圧縮、画像処理技術が、我々の日常生活の利便性を高め、また人の命を守るための技術として、活用されることを強く望んでいます。
ー先生の夢は何ですか。
ずっと夢見ているのは、情報通信の分野で、その時々に存在していない、10年後20年後に使える製品やサービスを作ることです。例えば学生の時にはまだデジタル動画像を保存・再生できる媒体(ディスクや簡易記憶媒体)がなく,記憶容量も十分ではありませんでした.しかし,チップなどの簡易な記憶媒体に動画が保存されるようになると予想していました。携帯電話やスマホがなかった時代には、将来はパーソナルな情報通信端末(モバイル機器も含む)が必ず開発されると思っていました。その時代時代で最新の技術を熟知している研究者たちが集い、10年後の未来を予測して議論します。研究者はその実現のために様々な角度から実現方法を模索します。研究者は決して現状のサービスに満足してはいけないということです。次の10年後、20年後にきっとこう変わっているだろうと未来像を思い描き、そこにどのように自分のアイデアを注ぐかということを、ずっと考えていきたいと思います。私は新しいものが大好きで、新たな製品やサービスの創出に貢献できると嬉しい限りです。