学生と共同で夢のメカニズムを研究[人間探究領域 小川景子先生]
こんにちは!
今回は、飛翔98号の記事からです。
今回紹介するのは、総合科学科 人間探究領域 人間行動科学授業科目群 小川景子先生です。
小川先生は、行動科学や睡眠について研究しておられます。
それではさっそく、研究内容からみていきましょう!
研究のきっかけは卒業論文
もくじ
―研究内容についてお聞かせください。
私は人の心を行動から解明する、行動科学を研究しています。行動科学とは、行動を分析して人の心を予測し、解釈する学問です。心理学って言うと「人の心がわかるんだよね」ってよく言われますが、心が分からないから研究しているからなあ。行動科学では、心と違って目に見える主観報告・行動・生理活動を使って人の心を解き明かそうとしています。私の研究で特徴的なのは、体の生理活動を使うという点です。まずは主観と行動が大事ですが、そこに生理活動を入れて、主観や行動には表れにくい心の機能を調べています。
*生理活動:生物体が生きているために起こる様々な身体の事象や、生きていくための身体の機能。呼吸、消化、排泄、血液循環、体温調節、代謝などの働き。
ー睡眠に興味を持ったきっかけは何ですか。
きっかけは卒業論文です。大学三年生の時、指導教員の先生の授業で夢のメカニズムがまだ解明されていないことを知って、「えっ、まだ分かってないんだ、やりたい!」と思いました。当然解明されていると思っていたので、分かってないことに驚きました。多くの人が夢をみるので、おそらく実在する現象だと思います。そのメカニズムを証明できて、目に見える形で説明できたらすごいなって思ったのが始まりです。
ー先生の研究はどんなことに役立っていますか。
夢の研究は精神疾患の解明に役立つかもしれないと考えています。もちろん両者は違う現象ですが、夢の中で勝手にいろんな映像が出てきたり誰かと会話する仕組みがわかれば、起きている状態で同じような現象が起こる精神疾患の方の理解や、解明に繋がるんじゃないかと考えています。
他にも、少しずつですが具体的に行なっているのが、盲の方にも「見える」体験を提供するための研究です。夢をみている時は、視覚刺激がないのになにか見る体験ができています。その仕組みが分かれば、視野障害の方にも鮮明な映像をみる体験をしてもらえるのではないかと考えています。
あとは、夢も睡眠も心身の健康状態を反映するので、夢や睡眠が自分のことを振り返るきっかけとなったり、健康管理の大事さに気づくきっかけとなったらいいなと思います。心の健康は睡眠と関連しています。しかも心の病と違い、壊れた睡眠はその大半が直し方も分かっています。睡眠を使って、心の健康を取り戻す手がかりが提供できたらいいなと考えています。
学生の自由な発想が大学で研究する面白さ
ーレム睡眠時行動障害で、夢に出たことがそのまま行動に出るんですか。例えば走る夢を見た場合は実際に走るんですか。
ちゃんと走る!
*レム睡眠時行動障害:睡眠中に夢体験と同じ行動をとってしまう病気。大声で寝言を言ったり、手足を動かしたり、歩き出すなどの症状がみられる。
ーレム睡眠時行動障害の夢で、例えばオリンピック短距離走の選手として走った場合、歓声でアドレナリンが出て、いつもより速く走れたりはするのでしょうか。
あると思う。瞬間的なパワーがばって出ると思う。ただ、おうちの中だからなぁ……
―外に行かせて
走らせて!?
―会場に行かせて
なるほどなるほど。
―みたいな
おー面白い!うーん、まっすぐ走れるかわからんけど(笑)。まずその夢を見て、寝ている向きと夢の中での走る方向が一緒でないといけないけど。。でも、もしそうなったら多分すごい速さで走れると思います。レム睡眠時行動障害って壁を壊す事例もあって、多分瞬発力がすごいと思います。
理論的にはいけるはず。ありだね(笑)あー面白い!いいね!大学で研究する面白さってこういうやり取りにあると思ってて。しっかり研究したいなら研究に専念できる研究所が良いと思うんです。しかも大学って、研究だけすればいいわけでもなくて、教育と研究を両方しないといけない。なので、研究の効率自体は落ちるかもしれない。でも、こうやって学生さん達から面白い発想をもらいながら一緒に研究できる、私にとって理想的な場所です。それ面白いな!やろうや!ってやったりとか(笑)。新しい着眼点を学生さんから貰ったりするのが面白いなあと思います。
ー総科を目指している高校生に向けてメッセージをお願いします。
総科は良いところですよ。大学教員って結局自分の研究に長年専念してきた人ばかりで、マニアックで変な人が多いですが、大学はそういう人たちの話を聞ける貴重な場所だと思うんです。特に総科は先生方の研究の幅が広い。そんな人たちから話が聞けるっていうのはなかなかないチャンスだと思います。自分が何を面白いと思って、何を感じるかを大学生の間に是非見つけてもらいたいです。気になることをいっぱいポケットに詰め込んで、そして4年後に何が残るかっていうのも楽しんでもらいたいです。